「From the Depth of My Drawer」によせて 奈良美智
90年に入ってから、なんとか自分らしい絵を描けるようになった気がします。
そして2004年現在、試行錯誤しながら良くも悪くも絵は洗練されていったように思います。それは方向性が絞られて進んでいったということなのですが、それを実行する中で捨てなければならなかったいろんな可能性もあったのも事実です。近頃、もしかしたらその可能性たちこそが本来の自由な自分の姿であったかもしれない、と思うことがあります。現状に行き詰まっている証拠なのかもしれませんが、ずっと開けることのなかった引き出しを開けるように過去の作品を見つめなおしてみたいと思いました。過去を見つめなおすことは、これから進むべき未来を示すヒントになるはずです。
今回の個展は、本格的な制作に入った80年代後半から最近までの作品を並べるとともに、置き去りにされた可能性の見え隠れする作品も加えて、今の自分を自分なりに再考する展覧会です。これまでの多種多様な自分の姿がそこにはあるでしょう。果たして、そこから立ち表れる現在は、これからの自分に何を示してくれるのでしょうか。
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